保育者たちにエールを!

副園長だより

先日、上田女子短期大学のオープンキャンパス内で行われたイベントに、私、副園長がゲストスピーカーとしてご指名をいただき、参加してきました。

ここ数年、同学校の保育士資格または幼稚園教諭免許を取得できる幼児教育学科への入学者が激減していることをご存知でしょうか?今現在の在校者数は、最盛期の4分の1を下回り、ついに学校の経営維持の観点から、来年度から男女共学の学校へ転換することになりました。実は同様の出来事は今、日本全国で起こっています。これはつまり、幼児教育者を志す学生が著しく減少していることを意味しています。中には廃校する学校まで出てきました。

こうした状況に対して、上田女子短期大学が現役高校生を対象にして開催したのが今回のイベントでした。「子どもが持つ育ちの力、そして保育の素晴らしさを発信したい!」「この学校の学びの質を更に充実させ、全国から志ある学生が集まる場にしたい!」という教職員さんたちの熱意。私はこの思いに深く共感します。この世に生まれる誰もが、乳幼児期を経て人生の歩みを始めます。そしてこの時期に育まれる人間としての核が、その人の人生の根っことなっていきます。しかし、乳幼児期の子ども達を支える保育者が社会からいなくなってしまえば、この国はいったいどうなってしまうのでしょう。

イベント当日、私は日々「認定こども園 芙蓉園」という幼児教育・保育の現場で感じている事、子どもたちの育ちの今、そして現場で懸命に頑張る職員・先生たちの様子やその思いや願いについて、お話をさせていただきました。

ところでここ数年「不適切保育」というキーワードで、幼児教育現場の一部で実際にあった不祥事について、多くの報道がされています。業界の一部にある(あった)不適切な保育は、もちろんあってはならないことです。しかし「不適切だ!」と糾弾する前に、実は社会全体がこの保育の世界を大切にしてこなかった現実があります。

待機児童対策として量の拡大を目指した新しい保育制度は、実は国の経済対策としても実施されてきた側面があります。それは子育てをする母親も早くに我が子を園に預けて働くことで、働き手として社会に戻って欲しいという意図。そこに乳幼児の母親と一緒にいたいという思い、「子どもの最善の利益」は蔑ろにされてきました。保育利用時間の長時間化と共に、情緒不安定な子ども達が日本全国の保育現場で爆発的に増えています。それに付随し、特別な支援を必要とする子ども達の急増は学校教育の現場でも大問題となっています。

11時間を超える超長時間保育が当たり前となった保育業界。それを限られた人数の保育者たちが決して高くない賃金で支えていくことは、そろそろ限界を迎えています。

最近世間から厳しい眼差しを向けられがちな幼児教育の世界。しかし実はその社会の雰囲気によって、現場の一生懸命な多くの保育者たちは、深く深く傷ついていることを知って欲しいのです。

日々頑張る保育者たちと話をしていると、その悔しさ、やるせなさ、切なさを感じている人が本当に多いです。この善良な人たちが社会からいなくなったら、いったいどうなってしまうのでしょうか。皆が真剣に考えて欲しいと思います。

世の中にはたくさんの職業がありますが、あえてこの道を自分の意志で選び、邁進する人たちは、特別な存在だと私は思います。どうか皆さん、彼女彼らにエールと称賛を折に触れて贈ってください。ね!

副園長 飯島 俊哲